木綿街道のおこり
島根県の東部に位置する出雲市平田町は「雲州平田」と呼ばれ、東に宍道湖、東西を貫流する船川と水路に恵まれた地域です。古くから商家の荷を運ぶ市場町として利用され、特に、江戸末期から明治初期にかけて、「平田木綿」は、大阪や京都で良質の木綿として高く評価され、遠方との取引が行われるようになりました。
川港のあった平田本町~木綿街道付近は木綿の集散地として多くの船が往来し、賑やかな市場町として発展し、多くの商家が軒を連ね町の繁栄を支えました。
現在、木綿街道と呼ばれている場所は、江戸時代は「松江杵築往還」と呼ばれる、松江から出雲大社への参詣道の一部でもあり、参詣客でもにぎわった場所です。
「木綿街道」という名称が生まれたのは、西暦2001年のことです。新町、片原町、宮ノ町周辺には、木綿取引によって繁栄した往時を偲ばせる伝統的な建物や文化を残す老舗が多く残っていることから、住民自らが「木綿街道」命名し、主体的なまちづくりが始まりました。
まちづくりを始めた当初はごく普通の住宅地だった場所ですが、長年の活動の成果により、現在では多くの観光客の皆様においでいただける場所となりました。
鉄道や交通の発展とともに、木綿街道は次第に使われなくなりましたが、 当時の賑わいを偲ばせる「酒蔵」や「しょうゆ蔵」などの商家、旧家の建物が残っており、下町情緒を今に伝えています。
街を歩くと目にとまる「黒瓦」や「なまこ壁」、「格子窓」の連なる二階建妻入り造りの町家は、平田独特の建物です。
現在、古い街並と今の暮らしがほどよくとけ込む「木綿街道」は、しっとりと落ち着いた風情を楽しめる貴重な場所となりました。
「木綿街道」は、地域の人からも愛されており、酒蔵でのコンサートやフリーマーケット、ギャラリー、餅つきなど、 様々なイベントが行われています。